Suno AI を使っていると、「もう少しだけ、こういう雰囲気にしたいんだけどなぁ」という感覚にぶつかります。テンポをもう少し速く、ギターをもう少し前に出して、ボーカルはもっとハスキーに — そうした細かい調整を言葉で伝えるのが、プロンプト設計という作業です。
運営者は AI Gakufu 用のデモ音源を作る過程で、Suno AI の V3〜V4 にかけて数百曲以上生成してきました。その試行錯誤のなかで、「これは効いた」というプロンプトパターンが見えてきたので、体系化してお伝えします。
- Suno AI プロンプトの基本構造(4要素モデル)
- ジャンル語・楽器・テンポ・ムードの書き方
- Custom Mode と Simple Mode の使い分け
- 歌詞を入れるときの [Verse] [Chorus] タグの使い方
- 再現性を上げる Seed と Persona の使い方
基本構造 — 効くプロンプトは4つの要素でできている
運営者の経験上、Suno AI に伝わりやすいプロンプトは「ジャンル・楽器・テンポ/ムード・年代/文化的文脈」の4要素を含んでいます。これをフォーマット化すると次のようになります。
[ジャンル], [主要楽器], [テンポ/ムード], [年代/文化的文脈]
例:
lo-fi hip hop, mellow rhodes piano, slow tempo, 90s tokyo night vibealternative rock, distorted guitar and pounding drums, energetic, early 2000s americanacoustic folk, fingerstyle guitar, gentle and warm, 70s laurel canyon
逆にうまくいかないのは、「いい感じの曲」「かっこいい曲」「泣ける曲」のような抽象的な指示。AIは「いい感じ」を学習していないので、もっと具体的な語で分解する必要があります。
ジャンル語 — 最初の1語で世界観が決まる
Suno AI は内部で膨大なジャンル語彙を学習しています。一般的なジャンル名(rock, pop, jazz, hip hop, electronic, classical, country)はもちろん、サブジャンル語も効きます。
運営者が実際に効果を確認したサブジャンル例:
shoegaze— 壁のようなギターの音像synthwave— 80年代風シンセ主体city pop— 80年代日本のAOR的サウンドneo-soul— 現代的なソウル/R&Bbossa nova— ブラジルの軽快なリズムpost-rock— 長尺の器楽インストambient— リズム希薄な音の風景drum and bass— 170BPM前後の疾走感
ジャンルを2つ組み合わせると個性が出やすくなります。例えば lo-fi jazz、orchestral hip hop、indie folk electronic など。ただし3つ以上を混ぜると破綻しやすいので2つまでが無難です。
楽器指定 — "guitar"だけでは足りない
「ギター」と一口に言っても、アコースティック、エレキ、クラシックギター、12弦、スライドギターなど多種多様です。具体的な楽器名を書くと、AIはそれに近い音色を選んでくれます。
効いた楽器表現の例
| ざっくり | 具体的 |
|---|---|
| guitar | fingerpicked acoustic guitar / distorted electric guitar / warm jazz guitar |
| piano | rhodes piano / grand piano / upright piano / mellow electric piano |
| drums | boom bap drums / trap hi-hats / brushed jazz drums / 808 kicks |
| synth | analog moog bass / supersaw lead / detuned pad / FM keys |
| strings | sweeping orchestral strings / solo cello / pizzicato violin |
さらに「主役」を指定したいときは featuring [楽器名] と書くと、その楽器が前に出やすくなります。例:ambient pop, featuring soprano saxophone, slow tempo。
テンポとムードの書き方
テンポは数値(BPM)でも感覚語でも指定できますが、感覚語のほうが破綻しにくいというのが運営者の体感です。
- 遅い:
slow tempo,ballad tempo,downtempo,chillout - 中程度:
mid-tempo,steady groove,laid-back - 速い:
upbeat,energetic,driving tempo,uptempo - 超速い:
frantic,breakneck,160 BPM,drum and bass tempo
ムードは感情の形容詞を使います。melancholic, uplifting, dreamy, nostalgic, aggressive, hopeful, romantic, haunting など。2語までに絞ると方向性が明確になります。
Simple Mode と Custom Mode の使い分け
Suno AI には「自然言語で放り込むだけ」の Simple Mode と、歌詞・タイトル・スタイルを別欄に入力する Custom Mode があります。運営者の使い分けは次の通り。
Simple Modeを使う場合
- インストゥルメンタル曲を短時間で量産したいとき
- 雰囲気重視でイメージを探索しているとき
- 歌詞にこだわりがないBGM用途
Custom Modeを使う場合
- 自作の歌詞を正確に歌わせたいとき
- イントロ→Aメロ→サビの構成を指定したいとき
- 2コーラス目のアレンジを変えたいとき
- 長尺(2分以上)の楽曲をコントロールしたいとき
歌詞の書き方 — セクションタグを活用する
Custom Modeで歌詞を入れる場合、[Verse] [Chorus] [Bridge] などのセクションタグを使うと構成がくっきりします。例:
[Intro]
(instrumental, 8 bars)
[Verse 1]
夜の電車 窓に映る
知らない街の灯りたち
[Chorus]
まだ終わらない 君の歌が
遠くで響いている
[Verse 2]
傘を忘れた帰り道
雨の匂い 思い出す
[Chorus]
まだ終わらない 君の歌が
遠くで響いている
[Bridge]
(guitar solo, 4 bars)
[Outro]
fade out slowly
この形式にすると、AIはセクションごとにアレンジを変えてくれることが多くなります。サビで楽器が増えたり、ブリッジでソロが入ったり。
その他、効くカスタムタグ:
[Instrumental break]— 間奏を明示的に入れる[Guitar solo]— ギターソロを指定(楽器名を変えればOK)[Build-up]— 盛り上がりへの助走[Drop]— EDMの低音部分[Whisper]— ささやき声で歌わせる[Spoken word]— 語り
再現性を上げる — Seed と Persona
V4以降、Suno AI には「気に入った曲の雰囲気で別の曲を作る」機能があります。これを活用すると、同じアーティスト感で複数の楽曲を作れます。
- Seed指定:既存曲のSeedを流用することで、音色傾向を揃えやすくなります
- Persona:気に入った1曲を「Persona化」すると、以降の生成でそのボーカル/アレンジ傾向を呼び出せます
運営者がデモ用のBGMを作るときは、まず満足する1曲を作り、それをPersona化してからEPのように何曲も生成する、という手順を取ります。バラツキが減って、まとまりのあるプロジェクトになります。
NGプロンプト — やらないほうがいいこと
逆に、失敗しやすいプロンプトの特徴は次の通り。
- アーティスト名の直接指定:規約上もNGですし、そもそも期待通りに動かないことが多い
- 形容詞の盛りすぎ:
beautiful, amazing, incredible, emotional, deep, powerful— これらは情報量が低く、方向性が散る - 否定形:
no drums,without vocalsは無視されることがある。代わりにinstrumental onlyのように肯定形で - 日本語と英語の混在:英語で統一したほうが精度が出やすい(歌詞は日本語でOK)
実例 — 運営者が実際に使ったプロンプト3つ
1. AI Gakufu トップページBGM用
ambient electronic, soft rhodes piano and airy pads, slow tempo, dreamy and hopeful, modern japanese aesthetic
→ 3分ほどの環境音楽的なトラック。サイト背景の動画にマッチ。
2. 紹介動画のオープニング
cinematic orchestral, rising strings and subtle percussion, dramatic build-up, 30 seconds, epic movie trailer style
→ ショート動画のオープニングに合う高揚感のあるイントロ。
3. 開発中の気分転換用
lo-fi hip hop, warm tape saturated drums, jazzy chords on electric piano, mid-tempo, rainy tokyo evening
→ 作業BGM。何時間でも流しっぱなしにできる。
最後に — プロンプトは対話だと考える
Suno AI のプロンプトは「一発で完璧な曲を出す魔法」ではなく、AIとの対話の第一声です。思い通りにならなかったら、気に入った部分を活かして Remix/Extend する、プロンプトを少しずつ変えて再生成する、Persona化して方向性を固める。この繰り返しで、「自分の曲」と呼べる完成度にたどり着きます。
そして完成した曲は、ぜひ AI Gakufu で楽譜化してみてください。音として聞くのとはまったく違う発見があります。